2015年12月19日土曜日

古き家への郷愁   長利 冬道(弘前ペンクラブ会員)

 最近、御幸町方面に用事で行く時に、ふらっと「太宰治まなびの家」に立ち寄ることがある。大正時代に建てられた「旧藤田家住宅」の引き戸を開け中に入ると、昔の私の家を思い出すからである。今は写真でしか残っていない家ではあるが、この建物に入ると不思議なことに心が落ち着くのである。私の昔の家にも土間があり、太い柱、太い梁があり、二階に上る簡素な階段があったと記憶している。それ故、まなびの家に入ると、それらが思い出されて郷愁に浸ることができるからだ。
 また、まなびの家で行われる数々の行事にも参加させてもらっている。例えば、朗読会、講演会、落語などである。これらの催し物もまなびの家で行われることにより、魅力を増し引き立つことと思う。
 先日、行われた朗読会の様子を「詩」の形にまとめてみたので、それを読んでいただけたら幸いと思う。

修治の言霊

太宰まなびの家にて
太宰治の小説を朗読
最高のシチュエーションだ
修治が舞い降りてきたように
座敷に「津軽」の言霊が響き渡る
標準語のなかに
時折混じる津軽弁が
心地よく聞こえる
太い梁と障子
大黒柱と襖
高い天井
古い日本間の様式が
趣を高めている
朗読が終わると
惜しみない拍手が
会場に沸きあがる
そして
人が去り
またいつもの静寂が
戻ってきた

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